相対化する

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多くの企業でマーケティングを支援していると、いつも担当の方々は「予算」と言うものを前に悪戦苦闘をされているのが分かります。私も現役時代、大きな目標に向かってまい進したものでしたが、やはり「予算比」というのは達成が困難であり、未達が続くことで、自信を失ってしまう……なんてことも珍しくないものです。

翻って写真のようなものであっても「いつまで撮影しても、実力の向上がちっとも感じられない」となってくれば、これはモチベーションが落ちても仕方の無いことでしょう。どうしても人間というものは(私が本ブログでよく言っているように)「小さな成功体験」を少しずつでも重ねていかないと、心にとっては厳しく、だんだんと当初の意欲や自信を無くしてしまうものです。

では、そういう状況に陥らない、あるいは打開するためには、どのような思考法を持てばいいのでしょうか? 過去、私は本ブログで「自分と比較する」とか「記録を残す」という類題でこれを語っていますが、端的に言えばそれは「相対化をする」という事に直結していきます。

少し面白い「たとえ話」をしましょう。

たとえば、ココに大学受験をした高校生がいたとします。彼は、入試試験を受け「ああ、出来が良くなかった」と思ったとしましょう。自宅に帰った彼は、自己採点を行いそれが「60点」だったとします。彼は絶望します。「もう駄目だ、落ちたに違いない」。しかし、実は彼は見事志望の大学に合格しました。なぜなら、全体の平均点は48点だったからです。

この中で、ずっと変わらないものがあることがわかりますでしょうか?

それは「彼自身が取った点数」です。ここには3つの観点が入っており、それぞれの認識で、その評価が大きく変わったのです。

まず、「出来が良くなかった」というのは「彼の主観」でしかありません。この時、数値的な証明はどこにもなく、良いも悪いも、彼の感情次第となります。したがって、これは特にビジネスの世界では論ずるに値しません。「僕が良い企画だと思うので稟議書を通してください」だけで通る会社は無いからです。

2つめは「自己採点をしてそれが60点だった」という事実です。この数字、一見して「あてになります」が、その実、結果は合格であり、必ずしも真実を捉えたものではありませんでした。なぜか? それは、この指標が「絶対値」だからです。絶対値はその数値そのもの印象を植えるため、「60点だから悪いに違いない」に帰結したのです。

最後は、もうお分かりかと思いますが「相対値」なんですね。全体の平均と比べている。だから、彼の数字は正しく評価され、合格という結果が見えました。まずこれが相対化することの基本思想です。

次に重要なのは、「何と」比べるのか?を常に考えること

相対化について理解出来たところで、趣味やビジネスにこの話を戻してみましょう。たとえば、予算比で達成できなかったとしても、前年同月比や、前月比で比べてみるとどうなるのでしょうか? あるいは趣味にしても、ベンチマークにしている作品や、過去の自分と比較するのはどうでしょうか? 重要なのは「確実に成果が出ていることを認識すること」であり、遠くに見える山がいつまで経っても近づかないことに嘆くよりも、後ろを振り返って街からどれくらい離れたのかを理解している方が「歩いているという実感が確実にある」という事実です。

自分が、前に進んでいることを正しい相対評価の中で理解出来れば、我々は歩み続けるモチベーションを持つことが出来るようになります。その時、相対化する対象を間違えず、固執せず(たとえば、ずっと前年比でいいとかもなく、たとえばコロナのようなイレギュラーもあります。ずっと前月比だと、クリスマス商戦と正月を比べることになるかもしれません)、適宜、必要な要素と比較することで、自己の「立ち位置」を理解する。

そうやって、足元を固めていくことで、絶え間ないモチベーションを維持することが比較的容易となっていきます。少しずつ目標への目線を向上させ、着実な歩みを持ち、成長の実感を持つことは大人になった今だからこそ重要な感覚です。そのようなことを(比較的)かんたんにできるこの考え方を、忘れずに持っておきたいものです。

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