選択肢を厳選する

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マーケティングの世界では「ジャムの法則」と語られているエピソードがあります。これはアメリカで教授が発表した「試食をした後にジャムを買ってもらう時の選択肢の数による人間の行動の違い」を実験したものなのですが、実際に「選べるジャム」を6種類に限定していたときは、30%近い購入率だったものが、24種類ならべたところ、わずか3%しか購入に至るお客様がいなかった……と言うものです。

マーケティング界隈で勉強をしたときも「この法則」にズッポリハマってしまう人は実は結構いらっしゃって、最初にある程度幅広にスタンスを取った後に「さあ、いよいよ学ぶぞ!」というフェーズに入った時に、厳選をしないまま拡張を続けてしまい「基礎も学ぶし、講演も聴講するし、最新のトレンド記事も全部チェックするんだ!」と言う学び方をされようとする人って、実は結構いらっしゃるのですが、それは「最新のパリコレクションを見て、ユニクロを着るんだ!」くらいギャップがある話なので「知識を学ぶことが目的」ならいざ知らず、「実務で使えるのか」というと、実は意外に「そうはならん」となってしまう傾向にあります。

一眼レフについてもこの思考・考察は当てはまっていて、この趣味の面白いところは「カメラに対してレンズを交換できる」と言う事だと思います。

「レンズ沼」という言葉があるくらいですから、レンズはこの世に数多にあふれている訳ですが、では、撮影者は常にそれら「すべてを」持ち歩くのか?と言うと必ずしもそうではありませんよね。

我々は、被写体や、その場所の様子を事前に下調べすることで「だいたいこの辺りのものを使いそうだ」と言う予測の元にレンズを選び、あるいは買い揃えていくはずです。そこには、端的に言えば「優先順位」と言うものが存在し、我々は知ってか知らずか、自己の積載容量と言うものも勘案して、行動するときの「選択肢を限定」させているはずです(それは、得てしてカバンに入る量とかだったりしますが)。

ご注意いただきたいのは、いわゆる「学び」に限定すると、この「積載量」が一見して無限に存在するように思えてしまう事です。

しかし、一日に学べる限界量や、集中力、そして、そもそもすべての人間に等しく与えられている「1日24時間」というのは実は明確に我々にとっての「容量」だったりします。したがって、「これはノルマだから学ぶ」とか「与えられているものをすべてやろう!」というのは、意気込みとしては買ってあげたいのですが、「最適解か?」と言われるとそうはなりません。

ましてや、ビジネスにおいては「タイムイズマネー」と言われるくらいですから、「ああ、良い事を学んだなと感じること」よりも、「実戦に投入して成果を出すこと」のほうがよほど重要であり、一眼レフでも「なぜ、被写体に併せて持っていくレンズを厳選するのか?」と言われれば「良い写真を撮るために集中する環境・下地を作るため」に他なりません。

現実面から考えれば、せっかく被写体がいて「シャッターチャンス」が訪れていても、自分がそのまえでレンズ交換や、カメラ選びにモタモタしていたら、その一瞬のチャンスは逃してしまう訳です。マーケティングにおけるビジネスもこれと同様で、ビジネスの場合は目の前に「これはチャンスです!」と転がっている事の方が稀ですが、そこには必ず「勝負時」というものが存在するのです。

身を軽くしておこう

ひとつ、こういう状況を的確に捉えるために必要なコツを申し上げておくと、それは「変な縛りはしないこと」だと思います。

たとえば、お客様で良く見ていて、自分も経験があるのが「契約しているから使うしかない」とか「〇〇さんの紹介だからこの事業者でやるしかない」などの話ですが、やはりこういう「枷」があると、実際問題、現場は自由に身動きが取れません。また、これは知識・情報についてもしかりで、身の丈に合わない(または畑違いの)知識のせいで、自分がやるべきことが見えなくなっている……と言うお客様も実に多いものです。

端的に事例をあげると、たとえばそれは、BtoB事業における「とりあえずSEO(検索ワード)対策」は、その最たるものだと私は思っているのですが、「SEOをやらないといけないですよね!」と仰る方は本当に多いのですが、私がそういった方々に「そもそもみなさん、BtoBで検索して情報探しますか? ちなみに、具体的には、どんなキーワードで検索されるおつもりなんですか?」と言うと「あれ?」と言う顔をされる方が多く、実際、検索量をちょっと調べてみれば「1位を取っているワードの月間検索量は30件でした」みたいな話は冗談抜きでよくあります。

加えて、その記事を書くためにあらゆるリソース(特に人とカネ)が使われているケースでは、それによって集客できる数が、いつのまにか手段から目的化していて、ある日「あれ、うちのサイト、流入は5倍になったけど受注増えていないじゃん!?」みたいになったりしてしまっているのに、「流入は今の更に倍にしたい!」とかマーケティング部署は思っていたりするのです(多くの場合、集客している対象を集めるために「〇〇とは?」みたいな簡単なノウハウをコンテンツにしてしまい、立派な辞書が完成しているパターン。これを読みに来るようなリテラシーの方が、貴社の顧客なのでしょうか……?)。

むろん、私は、すべてのBtoBで「SEOに意味がない」と言っているのではなく、「フェーズ、タイミング、リソース的に貴社に、あっている施策であり、そのコンテンツは適正なものを選択できているのか」と言う話でしかないのですが、この辺りは「始めてしまうと中々辞められない」(サンクコスト的な意味もあって)ものなので、つねに「しがらみとの関係」には注意し、身を軽くしていたものです。

シンプルに、必要な事だけをする

と、いう事で、こういった「にっちもさっちもいかない状況」にならないためには、「最初から厳選して考える」と言う事であり、思考プロセスや、環境ではまず「広げまくる」にしても、ある程度は「理由」をもって、厳選していきたいものです。

あるいは、それが苦手な方は、思考ではなく物理的にそれをおこなう「ミニマリスト」と言うのもある意味合理的な解決策の1つだと思います。

重要なのは「思考・ものを減らす」と言う行為そのものではなく、「厳選された選択肢の中で最適解を出せる」という行動側の方なので、この部分の意識を大切にしつつ「断捨離」を的確に常に出来るようにしていきたいものですね。

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