薄くつなぐ

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マーケティング施策の展開をしているときに良くするアドバイスの1つに「辞めるという決断は大事だが、ほんの僅かだけ残すという選択肢があっても良い」と言う話をする事があります。このアドバイスは「いずれ時代の潮流がかみ合うかもしれない」商品やサービスなどを展開しているときに主に適用され、昨今ではAI、少し前ならDX、もう少しさかのぼるとSDGsなどがこれに該当します。

変化を捉えるときに重要なことは「かかわりを捨てていないこと」です。10年前、SDGsの訴求軸を捨てなかったとしてコツコツと訴求を続けて(さえ)いれば、その波が来たときに「確実に変化を捉えられる」のです。だから、「止める」と「絞る」は、慎重に精査され、見極められ、使い分けられることが重要です。

趣味においてはどうでしょうか? たとえば、写真なら「毎日カメラを持つ」くらいでも良いかもしれません。得意ではない被写体を「まったく撮らない」のではなく「気が向いたときにだけ撮ってみる」のような事をしておく。そうすると、あるタイミングで突然「あれ、これ、結構上手に行けるようになってきたかも?」とか「案外、この被写体アリかもしれない」など、変容に触れるタイミングが訪れるものです。

「成長」とはつまり「前向きな変化」である。

関りを持たないことは、この変化のキッカケを捉えることすら「放棄する」可能性があるという事です。もし、あと少しだけ続けていれば……と言う事は往々にしてあるものですが、もし、うっすらとでも継続していれば、我々は的確に「変化の予兆」を捉えることが出来るのです。

とくに、「写真撮影」のようなアウトプットが容易なものであれば「なんか、上手く撮れるようになった」とか「コツを掴んだかもしれない」でも構わないのですが、我々はその変化を掴めます。

実は、人間、物事に飽きる構造はシンプルで、それが「自らに変容(成長)を感じないとき」です。

アンテナのカバー領域を小さくすると、、成長を感じる余地(可能性)もまた、狭まるリスクが内在します。「これは、絶対にやらない」という断定的な確信があれば、それをバッサリと切って落とす事とも重要ですが、「これはまた、どこかで使うかもしれない」と感じることについては、薄く、本当に「待機電力」くらいの気持ちで良いので、「捨てきらない」と言う選択は実は「あり」です。

私はコレまで多くの「絞り込み」についてのコラムを書いてきましたが、その実「うっすらと置いておく」と言う事を両立させています。捨てきらず、改めて引き出せる状態を作っておき、絶対に信念と違うものはバッサリ捨てる。そんな、選択のミニマリズムのようなものを持つと、多様な変化を敏感に捉え、成長の足掛かりと出来ることでしょう。

そのためにも、心の余裕を大切にし、受け入れるスペースも作っておきたいものです。

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