ひとつ、得る

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さまざまな事を試して、新しい境地・試みを行う事は実に発見が多く、だからこそ我々は「多くの成果」を狙いがちになります。しかし、ここで「あれもこれも学びなのだ」と1つのタイミングで欲張ることは、一見して効率よく何ごとかを獲得しているかのように見えて、その実「実際、最終的にはすべてが中途半端になった」と言うことは珍しくありません。

今回の話には要点が2つあり、ひとつは「成果」、もうひとつは「期待値」についてなのですが、順番に話をしていこうと思います。

まず、「成果面」から考えてみましょう。新しい試み、取り組みは時として、大きな挑戦の先に様々な成果をもたらします。知見が広がった、幸運な状況を享受することが出来た。学ぶところが非常に大きい体験をした。どんなものでも構いませんが、これらは我々の血肉となり、次の財産へとなっていきます。

私にしても、施策のそれならばマーケティングの成果や、お客様の実績、業界の慣習などから学ぶこともありますし、写真撮影で言えば、それは道具のチョイスや、写真の取れ高、知らなかった場所、ロケーションなどで知りえる「こんな所があったのか」などと言った感動もそれにあたります。

こういった経験は、いわゆる「歳を重ねると時間を早く感じる」と言う、ジャネの法則打ち崩すような「子供のような学び」を与えてくれ、我々に活力をもたらすものです。

ですから、そう言う局面を目の前にすると、我々はつい「もっとないのか!」となりがちですが、ここはひとつ「じっくり1つずつ重要なものから、確実に手にしていく」くらいの寛容さで良いかなと考えます。

なぜなら、その方が経験は確実にたまっていきますし、手にしたものの先に「次があること」が見えているだけでも、今後のアクションは間違いなく変わるからです。

同時に、「期待値」についてですが、これは先の「成果」を感じているときに、どうしても人間が考えてしまう「負の側面」と言って良いでしょう。二匹目のどじょうではありませんが、つい、我々は「前はこうだったからもっと、こうに決まっている」とか、「次はもっと凄いことが起こるんじゃないか」とか、勝手に欲目を書いてしまうんですね。

これは、物事が上手くいっているときにについつい感じてしまう事で、だからこそ我々はそこに(無意識のうちに)大きな期待を抱き、それが思ったほどになっていない(満たされていない)と、ガッカリしたり、怒りを覚える事すらあります。

しかし、こちらについても「そもそものベース(基本値)」から考えれば、そもそも成長は果たされている訳です。重要なのは「その時に得た事実」を、冷静に正面から受け止めたうえで「じゃあ、次にどうしようか」と、環境変化への期待にリソースを割くのではなく、自分の行動側の改善に努める事こそが、次の成長につながる健全なアクションと言えることでしょう。

大きく欲をかかず、大掛かりな成果を突然求めず、コツコツと、着実に踏み上げていく。

言葉にすると簡単ですが、中々どうにも難しいことではあります。しかし、そうやって心がけていっても、鍛錬はあっという間に積みあがっていくものですし、「気が付けばずいぶんと遠くまで来たものだ」と、ある日ふいに思うような結果に結びついているのです。

だからこそ「ひとつ、得る」というシンプルな思想で、着実に積み上げる喜びを大切にしたいものです。

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