奥に据える

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写真撮影を始めるようになってから、カメラを持って都内の色々なところに足を運ぶようになりました。

風景、スナップ、飛行機、電車、動物など、様々な被写体をまずは撮影して行っていますが、活動範囲をはじめとして、その幅は、最終的にはかなり大きくする予定です。

正直、私自身は「東京都心に暮らしている」訳でして、こういった撮影範囲はどちらかと言うと「自分の身の回りにある日常を再認識しなおしている」と言う事に近いため(それはそれで発見があって面白いものの)現在のところ「凄くきれいな名所に桜を撮りに行く!」とか「山の中にしかいない野鳥が撮りたい!」と言う類のものではありません(まあ、シーズン外というのもありますが)。

では、「そういうものは目指さないのか?」と言うと、そういう事ではありません。

逆に、それらは私の中の年間スケジュールにはザックリ「確定事項」として設定されており、現状の都内散策は、その「奥に据えた」目標に対し、「だから今日出来ること」まで逆算した結果であり、すべての撮影行為が目を養ったり、感覚や技術を磨いたり、大舞台に向けた発見をするための鍛錬の場になっているのです。

小さく始めるという思考

これは、ビジネスでもマーケティングでも重要な思考だと私は自負しているのですが、基本的にマーケティングのプロフェッショナルを名乗る自分は、自己のビジネスにおいてもこの「小さく始める」と言う事を本当に重視してきました。

たとえば、ビジネスもスタート時では、予算をかけず、借金をせず、まず、シッカリと実績を出して「ブランド形成」に時間をかけました。仮に借金をするにしてもしっかり〇カ年計画などの経営計画を立て、Webなどで公表し、それに対して適切に進捗を開示するなどの方策を取ったことでしょう。

なぜ、そこまでするのかと言うと、「マーケティングが得意とか、経営コンサルティングというくせに、自分の会社の経営状況はボロボロじゃないか」なんてことになったら目も当てられないからです(このくらいの事は、少しでも経理に精通している人間が、企業情報を調べればすぐにわかることなので)。

結論、経営5年目を迎える弊社の実績は、おかげさまで実例も、ブランディングも、経営状況も至って健全な訳ですが、重要なのは「その、今の瞬間」だけを切り取って評価したり学ぶのではなく、「そこに至ったプロセスの設計方法」を理解することであり、裏を返せば、私は創業時から「奥に据える(5年後、どうなっていたいのか?)」を、先に設定していたと言う事です。

実例からお話ししてみましょう。

私のマーケティングコンサルティングのお客様にある嗜好品の商材をやられている企業様がいらっしゃるのですが、ここの社長様はこの「奥に据える」と言う思想をそもそもお持ちで、本当に印象的な出来事がありました。

まだ、同社の商材が世の中にあまり注目されていなかったころの事です。弊社のコンサルティングの甲斐もあって、大口の取引が決まり始め、たくさんの引き合いが来るようになった初期のころ、その社長は(まだ経営的に伸ばしたいところなのに)、

「うちのブランドは将来、憧れられたい。だから、今回の取引は(ブランドイメージと違うので)我慢しました」と、

なんと、目の前にある大口のお話をいくつか(しかも堂々と)断り、私に事後報告してきたのです。

売り上げのまだ伸びていない最中で、そんなことを(しかも僭越ながらコンサルティングを受けている最中に独断で)決めてきた社長に私は正直「もの凄い信念だな」と感動しました。そして、いまではそのブランドは社長の目論見通りのポジションを形成し、誰もが憧れる場所で軒先を並べるなど、確固たるブランドを成立させるようになったのです。

「奥に据えること」は様々な価値をもたらす

このように「まず、奥に据える」と言う思想は、手前の行動をハッキリ変えます。

そして、その事により「未来の在り様」すら変わってしまう。「皆がやっているからこの施策がやったほうが良い」などという思想に陥らないためには、まず「奥に据え」て、手前でそのための準備や活動を決めていく必要がある。そうすれば、いま、目の前にある「毎日の在り様」の見え方も変わっていくはずです。

また、小さく始めることはリスクを低減させます。雨の中撮影をしてみて「なるほど、手袋が無いと寒冷地は撮れないな」と思えば、冬景色を撮影に行く前に防寒のカメラ用手袋が用意できる事でしょう。現地に行ってから「寒い寒い」と震える手でブレながら写真を撮っても後悔するだけなのです。このくらいの些細なミスなら(まあ、それでも十分痛いですが)さておき、ビジネスなら、その損失はシャレにならないはずです。

何かを始めるとき、何かをするときに「奥に据える」と言う思想は本当に役に立ちます。趣味に、ビジネスに。本当に真剣に向かい合いたい!と考えるものに出会ったとき、これまでよりも少しだけ目線を未来に伸ばして、

「将来、どうなりたいのか?」
「では、5年後はどうしていないといけないのか?」
「では、1年後は、どうあるべきか?」
「ならば、明日は何をすべきか?」

と、その可能性と、今やるべきことについて逆算思考で考えたいものです。

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