あえて制限する

20

先日、仕事の兼ね合いもあって一泊二日で高尾山に行ってまいりました。高尾山と言えば、都内でも(と言うか、世界的にも)人気の山でしょう。風景アリ、街並みあり、野鳥もいる。しかも、今回は一泊できる……と言うことで、仕事の合間だとしても被写体には困らそうなものです。

幸い自動車で行くという事もあり、荷物の制限もありません。であれば、広角、標準、望遠レンズなど、さまざまな装備を手にしたいところですが、私はあえて今回「標準レンズのみ」で行く事にしました。

多くの可能性を目の前にしながら、「標準レンズ」(なんなら、イベントの記録写真以外は、ほとんどLeicaの単焦点)のみで行動したのですが、結論から言えば、これは「大正解」だったと思います。一見、多くのチャンスを逃しそうなこの行動について、私はなぜ、「正解」だと思ったのでしょうか。今回は、そんなお話しです。

「思考ノイズ」を行動軸で外す

たとえば、マーケティング施策で戦略を考えているときに、せっかく「この軸で話をしよう」と決めていたのに、「やっぱりこの情報も伝えたい。ああ、キャンペーンの話もしたい……」など、情報量をどんどんと増やしていく企業様がいます。

こういう時、たとえば「防水のスマホ」を探している人には、本来、防水の話をシッカリ提供したうえで、「ちなみにゲームもできますし、動画もサクサク見られますよ」くらいのバランスで伝えればよかったはずの事を「これは、あれも出来てこれも出来て、しかもこの機能は~で、~技術で~で……」と、モリモリと情報のシャワーを浴びせ続ける。

ついつい、このような失敗をしてしまう企業様は本当に多いのですが、受け手側からすると、これでは、ほぼ間違いなく「思考停止」です。結局、機会損失すら生み出すことでしょう。

「展開のパターンが多い」と言うのは一見して豊かなのですが、真に重要なのはそれらを理解したうえでの「選択」です。

仮に今回私が、広角・標準・望遠の3本のレンズを持って行ったとすると、一眼レフの思考で言えば自分の目(被写体に対する)は「全方位・全対処」が出来ることになります。一見して「良さそう」です。風景良し、景色良し、野鳥良し。

しかし、おそらくこれでは、ロクな成果があがらなかったことでしょう。

要はノイズが多いのです、野鳥の声に気を取られて上ばかりキョロキョロ見まわしたり、遠い景色に気を取られて、近くの景色に目が行かなかったり、と「多方面」であるがゆえに「集中」が甘くなる。

しかし、たとえば「50mm単焦点一本」であれば、「片目で見える世界」を主に考えますから、必然的に自分を中心に半径数メートルだけに意識を高めればよくなります。これが自分なりの「集中力を高めるコツ」です。

登山では、未知の先の方に目を置いたり、これから上る登山道の方を遠めに捉える……と言う事が普通の視線移動になると思うのですが、近場の周囲や、その周りの自然に目をやると、たとえばこんな1枚が撮れたりするものです。

たとえ、高尾山に野鳥が多かったとしても、トレッキングで歩きながら風景も収めて……となっていくと、移動しながら……と言う事もあって行動には多くの制限がなされます。必要な要件を、最低限に収めることで「本来の目的だけを、研ぎ澄まして行使する」。

そのために犠牲になるものはありますが、それは「それをメインに撮りたいとき」に残しておけば良い事でしょう。マーケティングでも「だれに、何のために?」とは常にお客様にも言っていますが、結局一眼レフの世界でも「どれを、どのように?」と置き換えれば、行動は変わるものです。

関連記事