打席に立つ

24

マーケティングコンサルティングで指導を行っている際、ある程度の方向性などが見えてくると、多くのお客様の顔には「これでいけそうだ!」と言う感覚が芽生えます。実際、そこは「行けそう」ではありますし、確かに正しいルートではあるのですが、「実際に行けるのか?」と言うと、これはまったく別の話になる……と言う事もまた事実です。

私はそれをよく、ゴルフの練習に例えて話をしているのですが、要するに「正しいスイング理論」と言うのは、書籍や動画などで簡単に学べる時代になりましたし、理屈を理解するだけなら、そんなに難しくないと思います。また、ティーチングプロに教わって手とり足取り指導を受ければ、その瞬間は「出来る」わけでして、まさにこの状態を維持できれば問題ありません。

ですから、みなさまが等しくこの状態で「よし、これで行ける!」と思う訳です。

ところが、実際に時間が経過したり、あるいはラウンドに出てみると、恐ろしいほど「教わったことが出来ない」訳です。

これがまさに、「理論と実践」の違いの最たるもので、結局そこを埋めるのはまごうことなき「鍛錬」です。多くの方は言われてみれば当たり前のこの理屈を軽視しがちで、特にマーケティングのような領域は「知識」だと考えられがちなので軽視される傾向にあります。

ですが、一眼レフのような「じっくり挑める」ものであっても、結局同じことは起こっており、たくさんの写真をみて、素晴らしい構図を理解して、道具の使い方を覚えても、同じ場所、同じアングルを創ったとしても、気温が違う、時間が違う、レンズに移っている様子が、「その時とコピーの様に同じ」と言う瞬間はなかなかなく、結局その「溝」を埋めるのは鍛錬から生まれるあらゆる知識と経験によるものでしかありません。

だからこそ、日々、触れ続け撮影するという行為は、成長に直結します。

初期の打率が2割5分であっても、試行回数が10回よりは100回の方が、「当たっている回数」は増加します。そして、試行回数が増えることにより、2割5分だった打率が、6分、7分と、少しずつ向上していくのです。結局、ビジネスにせよ、カメラにせよ、その他の趣味にせよ「一回教わって、さあ終わり」だけと言うのは、都合のよすぎる解釈だと言う事です。

覚えておきたい落とし穴

ただし、打席に立つときに覚えておきたい注意点が1つだけ存在します。

それは「そもそも、正しい方向性にあることを理解する」事です。

たとえば、大阪に行きたい人が、一生懸命、東北に向かって移動を開始しても一生大阪にはたどり着けないように、元々のスコープを間違えてしまうと、いつまで経っても「正しいゴール」にはたどり着けないのです。

たとえば、私のところに来る相談で「アクセス数をとにかく増やしたい」とか「SNSをはじめてバズらせたい」などと言う事についてのお話しは、本ブログでも良く取りあげますが(というかこの相談、本当に多い)、「なんのために?」と聞くと、本当に詰まっていないことが多いのです。

正直、アクセス数を増やす話1つをとっても、企業が本来欲しいのは受注であり、対応の手間を考えれば「少ないアクセス数だけど、全部受注する」事の方が組織的負担は軽いのです。

リアル店舗でたとえば、それは「店舗に入った人にチラシを配ろう」と決めて大量に印刷をしたとして、店内に置いた「映えスポット」を目当てに「絶対に買わない人たち」が大挙して店に訪れるような集客をしたら、チラシの印刷代と紙代だけがドンドンと出ていくのに売り上げは一円も増えなかった……と言うような事です。

重症なケースでは、本人たちはそれで盛り上がった!成功した!とすら思っており、自分たちが忙しいことで、売上が上がらない事実を捉えられないことすらあります。

正しい方向性を定め、そこに向かって日々コツコツと積み上げる。結局、「正しい鍛錬」に勝てる上達方法はありません。それはビジネスであろうとも、趣味の領域であろうとも一緒です。知識と実践のバランスを取り、多くの「価値あるもの」に触れることで、打席に立つ効果を最大化し、そのうえで試行回数を増やす。

その研鑽の連続こそが、いわゆるPDCA(改善)サイクルを回し、施策の精度を向上させていきます。体得とは、そういった鍛錬の先にあるというシンプルな事実を、まずは認識しておきたいものです。

関連記事