日々、撮影を続けていると、自分にとって「良い写真」と同様に、「良くない写真」というのもストックされて行きます。もちろん、良くないものを大量に保有していても仕方が無いので最終的にはファイルを削除するのですが、私はこの削除の工程において一度足を止めて行っている事があり、それが「違いを確認する」という行為です。
自分にとって「良い写真」と言うのを、ある程度勢いに任せてでも数を集め始めると、それらの作品の中から「共通項」が見えてきます。それは、自分が撮影・表現したい、あるいは好みの作品・嗜好でも変わるものだと思いますが、たとえば、私の場合だと「対比」です。光と影、人工物と自然、動と静、計算と偶然……と言ったように、自分の場合は感性に響くもの、「これはいいぞ!」と思う写真には一定のルールが存在するのです。
この「ルール」を解明するという話は、撮影した写真の「共通項」を見つけることから始まります。
これはビジネスでも使えるテクニックの1つですが、たとえば、私の本業であるマーケティングの分野でも、お客様に訴求するチラシなどのクリエイティブひとつを取っても、「キャッチコピーが良かったのか、写真が良かったのか、色遣いが良かったのか?」など、実はその中に多様な要素が存在し、それらを特定することで、次のプロモーション施策の精度は確実に向上するのです。
また、「出来ているであろう」と思ったけど、家でよく見てみたら「何か違うな……」と思うような写真も、「もう少しここをこうすべきだったな」と触ってみたり、見てみるのも重要な事です。私は、Webサイトにアップするまでに、写真を厳選する工程を3回ほど行うのですが、このプロセスの家庭において、写真の1~3割くらいは「ボツ」になったりします。
それは、「撮影した瞬間」のみならず、自宅でレタッチをしているときなど、あるいは時間をおいたタイミングだからこそ冷静に見られるという観点などもあり、ここでジックリと「見極める」ことで、「何が自分にとっての正解なのか?」と言う事が徐々に「パターン」として理解出来るようになってくるのです。
パターンを理解することは結構重要で、というのもパターンの「成り立ち」を知っていれば、それを「踏襲する」ことも、「踏み外すこと」も容易だからです。その撮影する1枚が、「いつもの調子で撮りたい」のか、「ちょっと試してみたいのか」でカメラの設定や構図は大きく変わります。
理屈を理解すれば、多少「道」を外しても戻ることは容易です。しかし、それを感覚で行ってしまった場合、「フォーム改造をしてみたら、そこから自らのフォームが崩れてスランプに陥った……」と言うのはプロスポーツの世界などでも良く聞かれる話でしょう。
ルールを解明し、自らの中で理屈で整理できれば、その採用について制御が出来るようになります。これがいわゆる「引き出し・経験」と呼ばれるものの正体であり、私が本業で「言語化・可視化」する感覚でもあるのですが、あらかじめ言語化しておくことで、技術向上などにも有効に使えることでしょう。